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記憶のメロディがみなさまの心に響きますように

記憶のメロディがみなさまの心に響きますように

アトリエMOG/絵本「こころのメロディ」絵・文 のぐちちひろさん

ケアステーションジャパン
「人生には唄があるのです。私たちが生きてきた時代の中で、流行った歌を聞きながら皆支えられたのだと思います。」(のぐちちひろ)

大人向けに作られた介護絵本 「こころのメロディ」。家族の願いや絆、苦しみが喜びに変わる―身体の不自由な夫を介護する妻の物語。自己流で絵を描いたというのぐちちひろさんにお話を伺った。

福祉関係でお仕事されていたのぐちさんが、絵本を作ったきっかけは何ですか。

私は絵が好きで、趣味として独学で描いていたのです。福祉の世界に入ってからも、施設で子供たちに絵をプレゼントしていたら、皆さんが大変喜んでくれました。
平成18年、今まで自宅で療養中の母が要介護度4になり退職を決意しました。同年、今まで福祉現場でかかわった私の絵のファンの方のため、銀座で個展「子供たちの四季」を開きました。その個展をきっかけに、小淵沢絵本美術館館長より「あなたの絵は心に沁みいる絵だ。日本の童謡や歌をモチーフに、企画展をしてみませんか?」と依頼されました。しかし母が平成19年に他界し、その喪失感でしばらく絵を描けなくなってしまいました。

ちょうどその翌年2月、小淵沢絵本美術館館長から「今、介護で苦しんでいる人たちが多い。介護する人、される方が生き甲斐を持ち希望につなげられるような絵本、また介護していた家族を亡くした喪失感から立ち直れない人を応援するような絵本、そのようなテーマで、介護の絵本を作らないか」とお声を頂きました。モチーフは “身体の不自由な夫を介護する妻の物語にしてほしい”と絵本美術館の館長さんからの提案がありました。「リハビリ中で苦しんでいる夫が、妻や家族の応援により、やっと生きがいを見つけ希望につなげる。しかしその夫が急に亡くなり、後に残された家族が喪失感から立ち直るのも、家族自身の生きがい探しだ」私は、母を失ったばかりで絵本を作れる勇気がありませんでした。
でも介護で悩んでいる方のお話を聞いていると、「母を介護していた私自身の体験を書けば、介護をすることの大切さが伝えられるのではないか、応援できるのではないか。身近なところで諦めず生きがいを見つけて、それを希望に変えていけば必ず立ち直っていける」そう思いお受けしました。
旅行が趣味である私は初め「母を介護していたらどこにも行けないし、介護をしていると本当に疲れるな・・・」と感じていました。しかし「お母さんと、こんなにゆっくり過ごした事は初めてかな、これだけ一緒に過ごせることは、とても大切だ。」と思った時に、「どうやったらこの空間の中で工夫し、二人で楽しめるか」という想いに変わりました。それからは楽しみを、いっぱい見つけられました。

絵本はどのような物語なのですか。

“身体の不自由な夫を介護する妻の物語”にしてほしい。リハビリ中で苦しんでいる夫が、妻や家族の応援により、やっと生きがいを見つけ希望につなげる。しかしその夫が急に亡くなり後に残された家族が、喪失感から立ち直るまでを絵本にしたいと、絵本美術館の館長さんから提案が有りました。監修をして頂いた大田仁史先生は、日本のリハビリの第一人者です。大田仁史先生の患者さんは先生の応援で、皆楽しみを見つけて病気と向き合っています。私は、「母も同じだったな。私の絵を見ることを楽しみに元気が出たし、私自身も介護している中で、面倒くさいとか時間に制約をされる、自分の好きな事ができない、疲れるということが全部喜びに変わっていった。」と思いました。人生も同じで、ちょっとした発想の転換で苦しみが喜びに変わることを、介護をとおして学 べたのです。

この絵本を初めて見る方へのメッセージをお願いします。

歳を取ることは、必ず皆平等に起き、それから人を介護する時期も必ずくる。そんな時に、大好きな人や愛する人に対してどれだけ時間を割くことができるか、それが愛情のバロメーターなのではないかなと思います。そうすれば必ず大きな成果となり、自分自身が変わる一つのきっかけにもなります。「身近なところでの生き甲斐探しと共に、相手との時間を大切にする」ことも、介護の絵本をとおしてお伝えしたいのです。大人に限らずいろいろな年齢層の方達に、少しでもこの絵本を読んで頂き、ご自身の生きるヒントになれればと思います。

最後に、介護業界にとって絵の力とはどのようなものなのでしょうか。

絵に限らず、心を癒すものは人を変えるのです。辛い思いを誰かに聞いてもらいたい、受け入れてもらいたい、そういった思いに対する助け合いや本当の思いやりは、人間に絶対必要なのです。絵はその一つの手段になるのではないでしょうか。音楽やお話、絵は相手を想って何かの手段を作れば大きな力になると思います。私の想いは“心が温まり、癒される絵” を描くこと、それだけです。
【のぐちちひろさん プロフィール】
本名 野口千壽(のぐちちひろ)
元東京都職員。保育士を経て、非行少年の自立支援施設、児童養護施設、障害者福祉作業所などに勤務してきたが、平成18年、母の介護のため退職。個展や、絵本出版を機に企業や、日野市で開かれた家族介護者向け講座「母の介護といやしの絵」で講演した。
現在、青梅市小作にある絵本店「トロフィー」で、お話し会をしている。

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