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人間のサポートをしてくれるモノづくり

人間のサポートをしてくれるモノづくり

東京理科大学 工学部機械工学科教授の小林さん

CSJライター

人間のサポートをしてくれるモノづくり

 着用によって人間のサポートをしてくれる “マッスルスーツ”。空気圧式人工筋肉により、腕や腰の疲労軽減に繋がる新しい補助ウエアだ。この機械を使用することで高齢者や身体障害者、介護者の生活への負荷が軽減されると、介護業界からの期待も大きい。そんな “マッスルスーツ” を開発した東京理科大学 工学部機械工学科教授の小林さんにお話を伺った。

小林さんの研究経歴を教えて下さい。

 『学生の頃は表情の認識と表出の研究をしており、1993年一号機である人間と同様の顔表情を表出するロボットを公表しました。2004年には、世界初の表情を出す受付ロボットとして東京理科大学で受付を始めました。また、1996から二年間、表情認識とそれに応じた表情表出を行うために必要になる人工知能(AI)を学ぶため、スイスに留学をしました。』

小林さんは実際に表情を出すロボットの様子を動画で見せてくれた。人工筋肉を配置して皮膚を裏側から引っ張り、表情を出すことで人間とそっくりな動きを実現させていた。

 『現在は“先生ロボット”の研究を、難しい内容を先生ロボットで授業することにより、子供の集中力を高めて楽しく学んでいただくことを目的に行ってます。この“先生ロボット”はJapan develops world's first robot teacher(日本は世界初のロボット教師を開発)として全世界に配信されました。』

マッスルスーツを開発したきっかけは何でしょうか。

『 私は“人に本当に役立つ物を作りたい”という気持ちが強くあります。様々な研究を重ねていくうちに、生きていく上で何が一番辛いかと考えた時、自立出来なくなる事ではないかと思いました。その精神的な苦痛から、自立をサポートするモノをつくることで人間を解放したい、という想いから2002年4月、マッスルスーツの開発を始めました。

 そのうちに多くの企業から「介護者支援や肉体労働者のために役立つのではないか」という意見を頂き、2006年からは労働環境改善のために腰への負担をいかに軽減できるかということに特化したマッスルスーツの開発を始めました。』

マッスルスーツを開発するに当たって、どのようなことが大変でしたか。

 『“人間の身体につけるモノ” ということです。普通の機械ならコンパクトで性能が良く、コストを抑えて作れば良いですが、人間が使用するモノは実際に装着してみないと分からないのです。設計する側は良いと思って作っても、装着してみると色々な問題が生じます。一カ所直すと全体に影響を及ぼしてしまうので、その辺りが試行錯誤の連続でしたね。

 
最初は、背中に付ける部分は四角だったのですが、人間の上半身は上に行くほど大きく動くので、本体が肩に当たることがないように三角形にしました。また、体に触れる部分は、夏場に汗をかかないよう空気が流れるようにしました。2006年から開発を始め、今では開発当初と全く形が違うモノになりました。人間がいかに使いやすいように作るかという点で多くの工夫をしました。』


小林さんは、訪問入浴介護でマッスルスーツを使用する介護者の動画を見せてくれた。
ベッドから人を持ち上げて、バスタブまで移動する動作はとても体力を使う。しかし約30キロの補助をするマッスルスーツを使うと、100キロの方でも無理なく持ち上げることができるのだ。介護現場でマッスルスーツを使用すれば、介護者の負担軽減に繋がるのは明らかであるように思われた。

他にどんな研究を行われましたか。

 『通常自立歩行を維持するためには“足の蹴り出し”“肘の曲げ伸ばし”“股関節の開閉”の筋トレが必要です。これらを全て一台にまとめた筋トレ装置も考えました。
 高齢者の方は高血圧になる可能性があり、とても危険です。そのため、身体に負荷がかからず筋トレのできる研究を行いました。その結果、血圧上昇が抑えられ、筋力増強効果が得られる筋トレ装置が実現しました。

 また、2004年に誰でも立って歩ける歩行器“ハートウォーカー”に出会いました。この歩行器は、イギリスのDavid Hart氏が1989年に歩行障害を持った子供達が歩けるようにと発明したもので、世界中で普及活動が進められています。これを見たとき、マッスルスーツで使用している人工筋肉を使えば誰でも簡単に歩けるのではないかと思い、歩行器の開発も同時に始めました。』



 小林さんは、一生歩けないと言われた人が“ハートウォーカー”を付けて歩いている動画を見せてくれた。こうして他動的に訓練することによって筋肉も付いてくるのだという。画像に写っている方は、現在ではハートウォーカー無しで、自立で滑らかに歩くことができるようになっていた。
 現在は、車いす型で、装置を体に取り付けると自動的に立ち上がり、人の手を借りずに人工筋肉で歩行訓練のできる道具を開発しているそうだ。

今後、小林さんはどのような想いで研究を続けていきますか。

 『介護者を抱き上げてお風呂やトイレまで連れて行ってくれるロボットが実現したとしても、本当にそのロボットを使うのか、とても疑問です。やはり、特に介護の現場では、常に人間は必要だと思います。したがって、自動化ではなく、人間をいかにアシストするかが重要で、それにより介護者の肉体的負担を無くすことを目指します。私は現実的目線で、研究を追い続けたいのです。

 車いすをいかに使いやすくするか、デザイン性や機能性にこだわるのも一つですが、私はやはり立って歩いてもらいたい、それがゴールだと思うのです。
いくら良いモノを開発しても、使われるかは分かりません。しかし、私はエンジニアとして将来を見据え、今後ますます人に役立つモノを開発していきたいと思っています。』

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