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患者の視点から伝えられる話がある

患者の視点から伝えられる話がある

NPO法人“患者スピーカーバンク”

CSJライター

NPO法人患者スピーカーバンク代表・鈴木信行さん

患者・障がい者という立場から、一般市民、医療系学生、医療者に向けて、講演・講義を行う「患者スピーカー」。そのスピーカーとなるべき人材を育て、紹介しようと活動しているのが、「NPO法人 患者スピーカーバンク」代表の鈴木信行さんだ。鈴木さんは現在、聖母大学・日本医科大学看護専門学校で非常勤講師を務めたり、朝日新聞の医療サイトアピタルでコラムを執筆したりと、多方面で活躍している人物。鈴木さんが経営されている文京区・根津のカフェ「みのりCafe」でお話を伺った。

なぜスピーカーバンクの取り組みをはじめようと思ったのか、きっかけを教えてください。

私は、二分脊椎(※)という先天性の疾患があるんです。(編集部注:背骨の異常によって脊髄神経が脊椎の外に出ているため、さまざまな神経障害が起こる病気)その経験から患者会の会員として活動を始めたのがきっかけです。先天性の病気の子を持つ親御さんは、やっぱり不安ですよね。そこで、二分脊椎の“先輩”である私の話が聞きたいということで、講演をすることになって。私からすれば何ということはない、日常のことを話したところ、親御さん方が涙を流して喜んでくれたんです。安心されたんでしょうね。
そういったことがきっかけで「患者の視点からいろいろなことを話すことで、誰かの役に立つかもしれない」と思うようになり、高校生の頃から人前で話す機会が増えました。大学で医学生や看護学生に対して講演したことで、大学の教員たちも「これは学生にとっても有益な内容だ」とご理解をいただけ、今でも講師としてお話を続けさせて頂いています。
ただ、自分だけが活動していても広がりがありませんので、多くの患者と一緒に活動を始めました。レベルの高いスピーカーを育てていこうと。

「スピーカーのレベル」とは何でしょうか。

スピーカーは、聴講者が誰かによって話すべき内容が違うので、相手に適した話をしなければならないのです。ベースとなる話題はもちろん自分の抱える病気についてですが、相手のニーズによってカスタマイズして話す必要があります。聴講者は、今までも患者の話を聞くという機会があったと思いますが、多くの患者は自分の愚痴や、苦しかった体験談ばかりを話してしまい、聴き手側からすると聴いていて苦しくなってしまう。
そこで、一流の患者スピーカーを育てて送り込みたいと考え、組織としてNPO法人を立ち上げることにしました。現在は一流の講師を育てている段階で、いずれそのラインナップの中からニーズに合った講師を提供して活動していこうと考えています。

患者スピーカーは、どんなメッセージを相手に伝えればいいと思いますか。

何を本当に伝えたいのかは、色々な人の話を聞きながら患者スピーカー自身が決めればいいと思っています。ただ、本当に伝えたいことを明確にして話す必要がありますね。愚痴で終わったら意味がない。こういう現実がある、だからこうしましょう、と。しいて言えば、私たちも頑張るので医療者の皆さんも頑張りましょうという「共に良い世界をつくっていく」というところがメインメッセージとなるのだと思います。

カフェを経営されている理由は。

製薬企業で勤めていたときに、医療や介護の世界は従事者も患者も、一人で気持ちを抱え込んでしまう傾向があると感じたので、仲間をつくり、気持ちがリラックスできる、人と人との出会いの空間をつくりたいと思ったんです。色々な立場の人と出会い、人脈を作れる場が街のあちこちにあるといいじゃないですか。仲間内で来るようなカフェではなく、たまたまカウンターで隣り合わせた人と話すことで人脈が広がり、その中で新しい気づきが得られていくような場所にしたい。

将来的な目標をお聞かせ下さい。

そうですね、いずれどこの医療系大学でも、大学のカリキュラムの中で「患者スピーカーの話を聞く」という授業が当たり前になることでしょうか。名付けるとしたら、「患者コミュニケーション学」ですね。今の医療には、医療者と患者の間に見えない壁があると思うんです。お互いに建前で話すということは、心が通っていないということ。学生のうちから患者と接し、どうしたら心が通えるかということを学んでほしい。
5年後くらいにはどこかの大学で定期的に開講してくれて、7~8年後には効果が出てきて、10年後に注目されていれば。それくらい腰を据えて取り組むべきものだと考えています。

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